第20章 家族
~リランサイド~
襟元を裂かれた時、ぼんやりと思ったのは
こういうこと多いなぁ...だった。
もう、何も考えたくなかった。
「.......殺したい?」
その問いだけが、耳に残る。
― 殺したい。人間を?
.......殺したくない。
「リランちゃんは、もう汚れきってるんだぜ?」
その通りなのだろう。
そしてその汚れは、誰に復讐しても
消えるものじゃない。
「望めばいい。くだらねぇ人間の死を。
リランちゃんには、実行する力がある。
俺達と行こう...そうすりゃ、少年達は助かって
他の人間共は滅びる」
くだらない人間。
ギルバートは死ぬ。
大切な...仲間は助かる。
他の人間は滅びる。
― でも.......。
アレンが救いたいのは、何だった?
「僕は、人間とアクマ、両方を
救済したい。
できることなら、ノアも助けたい。
だから戦うんです」
耳に甦る、アレンの言葉。
リナリーもラビも、きっと神田や
コムイさんも...
そんなアレンの思いを理解している。
だから、心を1つに戦えている。
― みんなが救おうと頑張っているのに。
私が、その思いを挫いちゃダメだ。
アレン達だけが助かったって.......
そんなの嬉しくない。
ティキを見上げた。
「.......私も、人間だから」
― 弱い、醜い、くだらない?
.......そんなの、私だってそうだ。
どんなに醜かったって、
彼らがいなければアレン達と
出会っていなかったから。
「生きてることを誇れよ、
生きてなかったらオレ達出会ってねぇんだよ...。」
「オレは、リランと出会えて
良かったさ。
100人足らずしかいない
仲間に出会えて、嬉しかったさ。」
ラビ。
生きたいと、心の底で思っていても、
ラビの言葉がなければ...
私は、今までの任務で死んでいた。
前の私なら、アクマに斬られて死にかけたとき、
きっとあのまま死んでいた。
生きたいという気持ちを
後押ししてくれた、
あの優しい太陽のような人に
会いたいと、強く思った。