第19章 過去のトラウマ
~ラビサイド~
呆然と聞くしかなかった。
「私、本当に家族になれてるの...?
それが分からない。
人間は信用出来ない。
みんなは信じたいと思った、だけどっ.....!」
― そんな風に、思ってたのか?
オレらと笑って話しながら、
心の中ではそうやって悩んでた?
「教団にとって大切なのは、
『私』なの、それともイノセンスと
歌姫の力なの....?」
寂しげに、切なそうに呟いたリランは、
すっと立ち上がった。
破れたワンピースの前を合わせて、
ルベリエに頭を下げる。
「助けてくれて、ありがとうございました」
床に膝をついたまま、
目を見開いて固まるコムイを哀しげに
見下ろし、
くるりと背を向けるリラン。
「リラン.......」
遠慮がちに声をかけたのは、
いつの間にそこにいたのか、
リナリーとアレンだ。
リランは一瞥すると、
無視して2人の横をすり抜けた。
そして、科学班フロアから出ていった。
追いかけるべきか。
迷った末に、オレは追うことを諦めた。
― 今のリランじゃ、拒否されるだけさ。
嫌な沈黙の漂う司令室を見回し、
髪をグシャッと掴む。
コムイは、片手で目を覆った。
「リランを...傷付けた...。
僕は無責任だった。
教団の為に自分を差し出すことを
決意したリランを、責めてしまった.......。
あの時僕は.......
ありがとうと言うべきだったのか...??」
泣いてはいないけれど、
泣いているような独白。
苦悩に満ちたコムイの言葉は、
聞いているオレ達の胸も締め付けた。
「大切に、思っているのに.......」
「兄さん..........」
打ちひしがれる兄を気遣うように、
リナリーが寄り添う。
オレは、目を閉じた。
リランの哀しい顔が目に浮かぶ。
「くそっ.......どうすればいいんさ...」
やりきれなさが、
胸一杯に苦く広がった。