第19章 過去のトラウマ
~バクちゃんサイド~
ゲートの前に立っていたのは、
リランだった。
哀しげな顔で、僕を見る。
「リラン...?」
声をかけようとしたら、
ダッと走っていってしまった。
戸惑い、立ち尽くすと、
周囲の囁きが耳に入った。
「ノア側の人間かもしれないんだろ?」
「いいのかよ、のさばらせておいて」
「ノアの娘.......」
「いい加減にしないか!」
あの明るい瞳をあんなに曇らせたのは、
こういうタチの悪い噂なのだろう。
「仕事に集中したまえ。
君らには関係のないことだ」
怒りを込めた目で
研究員を順々に睨む。
彼らはすぐに無駄話をやめて
作業を再開したが、
胸のモヤモヤは晴れなかった。
― 何だか、嫌な予感がするな。