第18章 歌姫
~ノアサイド~
「千年公!!」
入ってきたのは、
珍しく厳しい顔をした
ロードと困った顔をしたティキだ。
「あらロード♡どうしましタ?♡
ティキぽんまデ♡」
「その呼び方やめてくださいってば」
伯爵は、膝に猫(ルルベル)を乗せて
編み物をしていた。
「千年公...気付いたでしょう?」
ロードはぎゅっと伯爵に
抱きつきながら、
ため息をつきたそうな顔で
囁いた。
「現れたようですネェ、我らの歌姫ガ♡」
ムフフ、と笑う伯爵。
ロードは今度こそため息をついた。
「分かってたくせに~!
だから、ルルベルにリランを
殺させなかったんでしょぉ~??
どうするの~?
ゲート、全部閉じちゃったよ~!?」
ロードの言葉に、ルルベルが顔をあげて
黒い瞳を伯爵に向けた。
「また開き直しですネ♡」
「めんどくさ~い」
気にせずルルベルを撫で続ける
伯爵は、ニコニコ笑う。
「えーと、どういうことですかね?」
事情も分からず、怖い顔のロードに
連れてこられたティキは
伯爵とロードの会話に割り込んだ。
「ティッキーってばぁ.......。
現れたんだよ、歌姫が」
「歌姫って...あの?
そりゃびっくりだ」
状況を理解してニヤリと笑う。
「で?どうするんすか、千年公?」
「連れてきてくださイ♡
顔の知られてないティキぽん、よろしく
お願いしますヨ?♡」
「りょーかい」
ティキは黒い髪をかきあげ、
シルクハットを被った。
「行ってらっしゃい、ティッキー♪」
可愛らしく微笑むロードと
伯爵に見送られ、ティキは
歌姫を連れに動き出した。
ルルベルは再び目を閉じ、
うたた寝をする。
ロードは部屋から出ていった。
「でもまさか...あの子が歌姫なんてね?
びっくりだよレロ~♪」
ロードがレロを掴み、
にっこり首を傾げる。
「また遊べるね、リラン...♪」
そして、ロードは鼻歌を歌いながら
何処かへ消えていった。