第17章 ノアの方舟
それから3日後。
「信じられないわ...」
婦長が私の傷を確認して
息を飲んだ。
「治りが早すぎるわ。
もう、こんなに塞がってる...」
半分ほど塞がった大きな傷は、
細かく小さい複数の傷後の中で
ひときわ目立っている。
「私、結構傷の治り早いんです。
小さい頃から」
「そうなの.......」
婦長は訝しそうな顔をしつつ
私に患者服を着せてくれた。
「どのくらいで治りますか?」
改めて聞くと、婦長は
数秒考え込んだ。
「そうね...この調子なら、
あと3日ってとこかしら?」
「3日.......」
3日で治るなら嬉しい。
白い病室は、過ごしにくいから。
この3日で、ミランダと
クロウリーはそれぞれ
任務に行ってしまった。
アレンやリナリー、ラビも忙しいのか
なかなか会えていない。
神田は....あれから会っていないから
分からなかった。
「傷は治っても、1週間は
任務とかダメよ。
治りが早いのは、意外と体に負担が
掛かっていたりするんだから」
考え事を中断し、
婦長を見上げる。
「分かりました。
安静にしてますね」
「あなたは聞き分けが良くて
本当に助かるわ。
そこらへんの仕事中毒者とは
全然違うわね」
「へ?」
布団に潜り込んで寝ようとした私は、
婦長をまた見上げた。
「...もしかして、アレン達のことですか?」
「えぇそうよ、動ける体じゃないくせに
病室から抜け出すの。
連れ戻すのにどれだけ苦労するか...」
心底ため息をついている様子の
婦長に、私は苦笑する。
「大人しくしてますから、
大丈夫ですよ」
婦長は笑うと、
私の頭を優しく撫でてくれた。
「早く治るといいわね」
「はいっ」
お母さんてこんな感じかな、と
少し思った。