第11章 元帥との思い出?
男に拾われてから3週間経った頃。
とある街の宿に滞在中のとき、
私は男の持ち物の中に
細長く白い箱を見つけた。
「何?これ.......」
男のいないうちに急いで
ふたを開ける。
「わぁぁ.......綺麗。」
中には、鮮やかな翠色の石がついた
豪華な額飾りが入っていた。
銀の装飾が施されていて、
それはとても美しかった。
「おじさん...誰かへのプレゼントかな?」
箱に戻そうとしたけれど、
あまりに綺麗なそれを
私は着けてみたくなってしまった。
ー 少しくらいなら、大丈夫だよね...?
ドキドキしながら
ちょうど額に翠色の石が
くるようにつける。
飾りは、私の頭にぴったりだった。
ほんの少し、嬉しい気持ちに
なった時だった。
「つっ...!?うっ...うぁぁぁぁぁ!!!!」
額に激痛が走った。
ふと気付くと、私は床に倒れていた。
気絶していたらしい。
私は急いで額飾りをとった。
「あっ!!ど、どうして!?」
とった飾りを見て、私は驚愕した。
翠色の石が、割れていたのだ。
真ん中に亀裂が入り、
無惨な姿になっていた。
ー どうしよう.......
血の気が引いた。
青ざめた私は、とりあえず飾りを
箱に戻し、自分の荷物を掴むと
宿から逃げ出した。
ー あんな高そうな物を壊すなんて。
しかも逃げるなんて。
私は恩知らずだ。
恩を仇で返すってこういうことだ。
逃げる私の目には涙が
滲んでいた。
ー ごめんなさい、おじさん.......
私はまだ、取り戻し始めた感情を
制御出来なかった。
いったん冷めると感情は全く
動かなくなるし、
逆にふとしたときに
感情が振り切れやすかった。
一度無くしたモノを、
再び取り戻すことは難しいのだ。
仮面のおじさんのもとから
逃げ出した私は、
額に刻まれた十字の模様を見つけた。
その正体も分からず、
アクマと遭遇したときは
体が勝手に動いて
戦っていた。
そのたびに傷付き、消耗して
当てもなく放浪しながら
1年を過ごした。
そして、アレン達と出会ったのだ。