第6章 その6.深入りしてはいけません
「…お、大野さんっ!」
急いでラウンジを出て、校舎の出口の方へ走ったら運良く大野さんを見つけられた。名前に反応した大野さんが不思議そうに私を見る。
「あれ、どうした。」
どうした…どうしたんでしょう。
二宮先輩から背中を押され、勢い良く出てきたものの…
「あ!大野さん、これあげます。」
ポケットにあるそいつを思い出した。
「…ジャムぱん?」
「はい。それ元気の出る味するんです!」
元気の出る味?と首をかしげる大野さんが少し笑って、私を見る。
「…元気、ない?俺。」
いつものように柔らかい顔なのに、悲しそうな目に私じゃ何も出来ないのか、と切なくなる。
私が大野さんの元気になれたら、そう思った。