第6章 その6.深入りしてはいけません
「、気になるんでしょ。」
わざと知らないフリして黙々とお弁当を食べる私に、二宮先輩が上目使いで聞く。
「…あ、いや。」
またひとつ、お弁当の中身を取って口に入れようとする。
「二宮先輩、気になってますよ、この子。マヨネーズの容器を口に入れようとしてるくらい。」
有稀に言われて自分のお箸の先にある物を見た。マヨネーズを入れたケースを器用にお箸で持ち上げている。…何やってんだ。
私が自分に呆れていると、相葉さんが身を乗り出した。
「ねえ、二ノ、ゆずって誰?」
わ、私が聞きたくても聞けないことを…。
グッジョブ、相葉さん。
相葉さんが聞いたのに、なぜか、私の方をチラッと見て二宮先輩が口を開く。
「大野さんが離れなれない人。」
「………」
私にはそんなんじゃない、って言っていたけれど、やっぱり柚希さんは大野さんの大切な人なんだ。
彼女?と松本さんが聞く。
「いや、知らない。あの人俺にそんなこと言わないもん。」
やっぱり、そうなんだ。
「…でもまあ、もし仮に彼女だとして、会いに行くのにあんな憂鬱そうな顔しますかね?」
二宮先輩が何か言いたそうに、また私を見る。
何が言いたいのか全くわからない。
「、大野さん疲れてるよ。追いかけないの?」
「え、」
「あなたが元気にするんでしょ?」
今日の二宮先輩は意味がわからない。
だけど…沢山答えをくれてる、気がする。
私は一度下を向いて考えた。
「……先輩、ちょっと行ってきます。」
「はい、頑張って。」
先輩は私に小さく手を振った。