第3章 その3.素直に信じてはいけません
「大野さん!」
私の声に大野さんが振り向くと眠たそうな顔が「あ、」という顔をした。
「今日は、一人ですか?」
さっきまで私と一緒にいた取り巻き(正確には二宮先輩)はいないみたい。
「うん、ひとり。」
「そうですか、」
「「…」」
呼び止めたものの、話す内容が、ない。やばい沈黙だ。こんなんじゃ大野さん、また一人で空見上げちゃう…。
下を向く私に大野さんが先に口を開いた。
「…何か用?体重教えてくれんの?」
「え!?あ、ああ…じゅ、15キロです。」
やばい20キロ以上もサバよんでしまった。
「うそつけ」と笑う大野さん。
きゅ、きゅん。
いつもの優しいフンワリした笑顔ではなくク
シャっと八重歯を見せて笑う。
15キロでよかった…!(もちろん嘘)
「じゃあ、これ食べて20キロにしてきなさい。」
そう言われてまたパンを渡される。
そうだ、大野さんパン屋さんになりたいんだった。
「…メロンパン、」
「うん、うまいよそれ。」
「パン屋さん、…私も手伝いたいです。」
「え?」
「大野さんがパン屋さんになるなら私、お手伝いします。」
「なに、それ。誰から聞いたの、」とまた笑う。
「二宮先輩が大野さんはパン屋さんになりたいんだって。」
「あー…まあ間違ってはないけど、
ならないよ、俺。」
「え…?」
「二ノ適当だから。」
どういうこと?二宮先輩が適当なのと、大野さんがパン屋さんにならないことがどう繋がるの?
「他に、何聞いたの?」
「…あ、えっと…」