第3章 その3.素直に信じてはいけません
「先輩…私、大野さんのために何か出来ることはないんでしょうか。」
「クッ…あ、ああ、うん、が笑わせてやりなよ。もうしつこく付きまとって1人でいられる時間とかなくせばいいじゃん。」
そっか、今はダメでも、もしダメになったとしても大野さんが辛い方が私は嫌だ。
「…私、諦めません。勝ち目なんてないかもしれませんが、今は大野さんが寂しくないように頑張ってみます。」
また馬鹿にされると思ったけど、眉を下げて呆れたような、優しい顔をされた。
「ん、頑張れ。」
「…なんで、先輩嬉しそうなんですか。」
「え?そう?嬉しそう?」
んふふ、と両手で口を押さえる。
女子かって。そこらへんの女子より女子だって。
「ええ、嬉しそうってより楽しんでますね。」
「あはは、そうかも楽しいんだもん。
まあ、何かあったら頼りなさいよ。
俺がついてるなら無敵でしょ?」
ああ、何日か前の私なら、またこの顔に言葉にどきまぎしてたんだろうなあ。
「はい、先輩は敵じゃなかったら
だいぶ心強いです。」
先輩がまた嬉しそうに笑う。
適当だし、怪人二重面相だし、信用ないし
女好きだし、ぶりっ子だし、本当に嫌な人だけど
嫌いにはなれない。
一体どれが本当の先輩なんだろう。