第2章 その2.勘違いしてはいけません
「はい、泣き止みなさい。
これやるから。」
立ち上がった大野さんが私に手渡したのは
「・・・クリーム、パン、」
「ん、それ言っとくけど
2時間並ぶやつだからね。」
「に、2時間・・・」
貰ったパンの袋を破いて半分に割って大野さんに渡した。
「・・・おすそわけです。」
こんな大切なパン、一人でむしゃむしゃ食べられません。
私からクリームの落ちそうなパンを受け取って大野さんが言った。
「なんか、・・・生意気。」
大野さんから貰ったクリームパンは甘くて美味しかった。
いつもなら笑顔になるはずなのに、そのフワフワした生地の柔らかさのせいか、口に含むと誰かに抱きしめられたような優しさで、また涙が出た。
「・・・おいひいでふ。」
「そ、よかった。」
そのあと私が渡したクリームパンを口にした大野さんは「なんだコレ、マジうめえな」とマジマジそれを見つめる。
その姿があまりにも面白くて、
私は泣いたことなんてすっかり忘れ
その日残ったのは
パンを食べた時の優しい気持ち。