第1章 その1.目で追いかけてはいけません
「…好き、です…。
二宮先輩が好きなんです。」
触れられた手が恥ずかしくて、熱くて涙がでた。
「…泣かないでよ、
ほら、顔あげないと」
そう言って左手で私のアゴを持ち上げる二宮先輩が笑った顔を近づけて、そのまま私に唇を重ねた。
「ね、キスできないよ?」
目の前にはゆっくり目尻が細くなる可愛い先輩。その大胆な行動と、子犬のような顔がアンバランスで。先輩の甘い視線に体が熱くなって思考回路が停止した。
「…あ、や、ししし、失礼致します!」
私はその場からダッシュで逃げてしまった。
「ふふっ、」
「……ニノ、」
「なあに、大野さん。」
「あんまりやめときなよ。」
「え?何を?」
「いや、」
「あーあ、楽しくなりそう!」