第12章 その12.後ろ向きはいけません
「…おじいちゃんが亡くなって、私、
1度も智を恨んだ事なんて、ないよ?」
「…うん」
「でも、責任を感じてる智に甘えて、
それを利用した。
最低なのはわかってた。
でも、それでも
寂さをまぎらわしたくて
絶対的に私を裏切らない何かが欲しくて、
私にはその権利があると…
それを智に押し付けた。」
柚希ちゃんと大野さんの関係。
「好き」とか「嫌い」とか、そんな簡単なものじゃない。私の大野さんに対する気持ちなんて、そんなの比べ物にならない感情が2人の間にはあった。
「智はいつも優しく受け止めてくれて、
この世界があれば私は大丈夫、
だなんて思ってたけど…
やっぱり一番近くにいる人の想いって
わかっちゃうんだね。」
柚希ちゃんが寂しそうに下を向く。
「気づいたの、そんな智を見て、
私の気持ちは間違ってるんだって。
私の智への気持ちは
自分を守るためのエゴなんだって。」
「ゆず、俺」
「わかってるよ、智。」
「………」
「私、智のおかげでもう大丈夫だよ」
「………」
「智はもういらない、1人で大丈夫だよ、私」
「…ゆず」
「のいう通り、
学校に友達いないけど、やってみる!
たぶん大丈夫だよ、
なんとなく出来そうなの、今なら。」
柚希ちゃんがパーカーのポケットに両手を突っ込んで、私を悪戯な笑いで見つめる。
その笑顔が凄くカッコよくて、可愛くて、羨ましいくらいに輝いていた。
「それに…」と再び口を開いた柚希ちゃんが上目遣いで、伺うように大野さんを見つめる。
「…今までと変わらないよね?
私には智も和也くんも、」
その視線が私に戻って
「も側にいてくれるんでしょう?」
と言われた。