第12章 その12.後ろ向きはいけません
「…有稀、私間違ってたのかな」
大野さんにも関わるなと言われ、二宮先輩からも来るなと言われた。
その原因が全くわからない。
「……いや、間違ってなんかなかったよ。」
有稀が優しく笑ってくれた。
「、無理しないで」
「泣いてもいいんだよ」
泣く
そんな暇、なかった気がする。
二宮先輩に一目惚れして
勝手に傷付いて
大野さんの優しさに触れて
また人を好きになって
そこにいるのに
何故か凄く遠い人で
追いかけるために必死で
私を視界に入れてほしくて
大学に入って
そんな初めてをたくさん経験した。
傷付いても振られても
気持ちに余裕がなくて
バカだから速すぎる状況に
頭もついていかなくて
泣くなんて、
そんな暇なかったのかもしれない。
「……ゆ、き…私、まだ泣けない」
まだちゃんと終わってないもん。
今泣いてしまったら
私は前に向かえない気がする。
「……そう」
「……うん」
「顔、今にも泣きそうだけど?」
「い、言わないで。が、まんしてるから」
「そっか、」
有稀がまた優しく笑って、私の頭を撫でてくれた。
「そんなが大好きよ」と何よりも嬉しい言葉で私の背中を押してくれる。
「…有稀、ありがとう」
「いいのよ、私のは親みたいな愛だから」
「…ふふ、うん、大好き」
「ほら、行ってらっしゃい。
あの人のとこ、行くんでしょ?」
「うん、行ってくる」
「頑張って」と微笑み手を小さく振る有稀を残して、あの人のいるであろう場所に向かった。