第10章 その10.気付いてはいけません
「久しぶり」
「…ん、あ、二ノ」
教室に入ると久しぶりに大学にいる大野さんの姿を見た。ドスッと隣に座る。
「………」
「………」
なぜか空気だけがそこにあって、特に話す気分じゃなかった。
いつもは話すことのない大野さんが先に口を開く。
「…最近、柚希がの話ばかりするんだ」
机にうつ伏せになり、顔を隠したまま俺に話す。
「へえ」とただ相づちだけうつような、そんな言葉で返すと、
「…元気?」と聞かれた。
わからない、自分がわからなくて。
ただその言葉にイラついた。
「大野さん、そういうのは自分で確認しなさいよ」
「…そうだね」
また2人の会話が無くなる。
するとタイミング良く、3人が俺らを見つける。