第9章 その9.自分だけ、ではいけません
「俺も居るし。ちゃんと周り見れば、意外といるよ。柚希には。」
黙って柚希ちゃんを見ると、口は笑っていても、目が凄く悲しそうで、胸が急に苦しくなった。
「……わかんなかった、自分ばっかりで。」
先輩が、いつも私にするように
魔法の言葉をかけていく。
「そういう時もあるよ。ただ、時々は俺らの相手もしてよ。大野さんばっかりじゃなくて。」
先輩の言葉で柚希ちゃんも素直になっていく。
「………うん、……」
なんだかいい感じの雰囲気に、さっきまで怒っていた気持ちも無くなってしまった。
柚希様から柚希ちゃんに戻ると、突然「」と呼び捨てにされた。
「は、はい。なんでしょう。(これはどっち?柚希様?柚希ちゃん?)」
「いつでも相手、してあげるよ。」
「え?(柚希様、きたー!)」
「だから寂しかったら、私が相手してあげるって言ってるの!」
「え、偉そうだな、柚希ちゃん。(いえ、柚希様)」
「可愛いからね。」
「………だから友達いないんだよ。(うん、ほんとに。)」
「あんたほんとは私より性格悪いでしょ?」
堪えきれずに声を出して笑うと、柚希ちゃんの本当の笑顔を、笑い声を、初めて聞いた。
声を出して笑う柚希ちゃんは
本当に可愛いかった。