第2章 悪魔との出会い
朧気な意識の中、私は数時間前の事を思い出す。
※※※※※※※※※※※※※※※※
「お父さん、気をつけてね」
木製のドアの前で、私は靴を履くお父さんに向かってそう言った。
目の前で揺れる白髪だらけになってしまった髪の毛。
母と別居してから沢山苦労をかけてきた事が伺える。
お父さんは靴を履き終えると、私より少し暗い緑の瞳を私に向けた。
「明日の朝に帰るから鍵はしっかり閉めておけ。朝飯はいらない」
私が小さく返事をすると、お父さんは私には一瞥もくれずドアを開けた。
既に柔らかな薄紫色になっている空がこちらからでも伺えた。
いってらっしゃい、という間もなくパタンとドアは閉まってしまった。