第1章 真央霊術院
「桐岡さんって怖いよねー」「ね!それ思ってた」
「まだ一年生でしょ?なのになんで"詠唱破棄"が出来るの?」
「「「ホント化物みたいだよね..近づきたくない」」
上級生からの冷たい視線─
理由はわかっている。
それは、私が12歳にして詠唱破棄が使えるから。
詠唱破棄はどんなに霊力が高い者でも威力を保持するのは難
しいと言われているもの。でも私にはそれが出来る。
確かに生まれ持った才能もあると思う。
けれど、一番の理由は私が努力したからできた。
だから努力もしないで人のことを批判するあの上級生たちの
言葉や視線は気にしていない。
それにあと2年もすれば卒業でき、
晴れて護廷十三番隊に入隊できる。
だから、それまでの我慢─と思っていたのだけれど。
[桐岡春─教室まで来なさい(黒白の羅 二十二の橋梁
六十六の冠帯 足跡・遠雷・尖峰・回地・夜伏・雲海・蒼い隊
列太円に満ちて天を挺れ)]
天挺空羅だ─そう思いながら普段現世の学問などを学ぶ時に
使っている教室へ足を向ける。
ノックをし、失礼しますと一言告げ扉を開ける。
『桐岡春、何故呼ばれたかわかっているか』
黒髪に銀縁の眼鏡を掛けた指導者らしき人物が口を開く。
でも私は何故呼ばれたかなんてわからない。
「いえ、分かりません」
『...そうか。では質問を変えよう。』
「はい」
『...お前は何をした?』
少し荒々しい口調で私に詰め寄る。
...何をしたと聞かれても思い当たる節は全く無い。
「何を、ですか?..すみません思い当たる節がありませ..
『ふざけるな!じゃあ何故彼女らは傷ついているんだ!』
....彼女等?
もしかして...
「それって瀬野四年生、赤霧四年生、工藤四年生の事です
か。」
私に冷たい視線と言葉を投げかけてきた上級生たち。
もしやと思って聞いてみたら、
『聞かなくても分かることを聞くな!!
お前は詠唱破棄という力を持ちながら彼女達を見殺しに
したのだろう???私がはいってなければ彼女たちは死んでい
た!』
その通りだったようだ。