第8章 ねぇ遠藤くん
あのことがあった2日後。
放課後、帰ってきた私は、良太の家の前で立ち止まる。
インターホンを押す。
ピンポーン…
ガラッ
2階の窓が開く。
良太がこっちを見下ろす。
「待ってて。今、行く」
良太が玄関の扉を開けてくれる。
「あがってくだろ? どうぞ?」
「うん…。お邪魔します」
良太の部屋にあがる。いつものように。
そして、いつものように座る。
「早いじゃん」
良太が先に口を開く。
「え?」
「返事だろ? まだ確か2日目」
「あ、うん。あの…良太…」
私は良太の顔を見上げる。
言いにくいけど…言わなきゃ。
「ごめん…良太。私、良太とは付き合えない…」
「…そうか。こないだ家に来てた男と付き合うの?」
「うん…」
「家で勉強してたみたいだけど、あの人、頭はいいの?」
「うん。うちの高校の中でも出来るほうだと思う」
「そっか。よかったね、ゆう。あの人パッと見、どこがいいのかサッパリわかんないけど、頭がいいならね。ゆう、勉強教えてもらえるね」
「そうだね…」
そうだね…どこがいいのかわかりにくいよね。
私、自分でも正直よくわかんない。
「僕、N高に行く」
「えっ」
「僕はもともと身体動かして遊ぶのが好きだけど、ゆうと一緒にいたくて、本読んだり勉強したりしてた。
でももういいや。自分に向いてることを目一杯やる。
N高に行って、バスケ思いっきりやって…女子にモテたらいいなぁ」
良太がニコッと笑う。
「モテるよ、良太」
本当にそう思う。
「ゆうはボンヤリしてるから気付いてないかもしれないけど、中学でもわりとモテてるんだよ?」
「うん。知ってる」
「明日からは見守らないからな。ちゃんと遅刻しないで学校行けよ」
「うん…今までありがと」
「なんだよ、そのお別れみたいな言いかた。隣に住んでるんだから道で会ったら挨拶ぐらいしろよ?」
「うん。良太…」
「うん?」
「今日は帰るね。バイバイ…」
「……。バイバイ」