第8章 穏やかな時間
「ん、やっぱり美味しいです」
程よい甘さで美味しい。
それにメープルがかかっている。
嬉しいひと手間だ。
火神くんはホッとしたように笑って
皆の分を作るとキッチンに戻って行った。
黒子くんも手伝いますと同じように
キッチンに戻っていく。
残されたのは私と赤司くん。
赤司くんは私の目の前の椅子に座り
紅茶を飲む。高校生には思えない
落ち着きぶりだ。
「皆さんいつもこんな朝早くに
起きてるんですか?」
「あぁ・・・他は分からないが
僕は朝、ランニングをするため早起きだな」
「あ、そうなんですか
どれくらい走ったんですか?」
「だいたい10kmくらいかな」
「・・・・・・」
朝からアクティブだなぁと
少し唖然としつつそれだけ
走ってきたのに涼しい表情をしている
姿を見るとやはり、他と違うことが分かる。
「藤宮は今日も仕事かい?」
「んー・・・そうですねぇまだ考えていません。」
「そうか、藤宮は毎日忙しい人だと
彼らが言っていたよ」
「・・・翔たちですか?」
「藤宮が作る服は売れるからと」
「・・・何ですかそれは」
呆れたように言えば赤司くんは
小さく笑って席を立った。
その姿を目で追えば、棚の上から
雑誌を持ってくる。
見覚えのある雑誌に目を丸くした。
「それ・・・」
「藤宮がデザインした物が載っている
雑誌だそうだね、もらったんだよ」
「・・・はぁ」
何をしてるんだろうか翔たちは。
私がいない時にそんなことをしていたとは
っというか、常日頃から雑誌を
持ち歩いてる事に驚きだ。
「藤宮が作った服、僕は好きだよ」
「・・・・・・」
そう言って微笑む赤司くんに
なんだか照れくさくなって誤魔化すように
フレンチトーストを口に入れた。
「・・・ありがとう」
「いいえ」