第1章 本編
「あの~…」
俺は目の前の物体を指差した。
「だからお弁当だって。食べて♪」
「…これは食えるのか?」
明らかに食べ物には見えない、その弁当の中身は…
「ご飯に卵焼き、タコさんウインナーにサラダ。ポットに味噌汁入ってるよ?」
聞く分には美味そう何だが、何やら一工夫されているらしく、
「卵焼きと味噌汁に納豆入れてみたの!見た目はアレだけど、味には自信あるから!」
「味云々より、見た目が…」
俺はポロッと本音を漏らした。
「…食べてくれないの…?」
不二子は泣きそうな声で俺を見ている。そんな瞳(め)、反則だって…
「食べるけどさぁ…」
俺は恐る恐る箸を伸ばす。
──ぱくり
「・・・・・」
不二子はじっと俺を見つめる。
「…ぅまい、意外といける」
「本当!?やったぁ~♪」
不二子は瞳をキラキラ輝かせた。あぁ…その顔ダメだって…
「不二子、ぁ明日もよろしくな!…き期待してる///」
俺は抱き締めたい衝動を抑え、精一杯の言葉をかける。
「うん☆頑張って作るから!」
無邪気に笑う不二子が愛しくて、気が付けば抱き寄せていた。
「お前、俺に永久就職な!浮気すんなよ!」
「そっちこそw」
そう言って2人で笑い転げた。
放課後の帰り道。
「ただ味噌汁は普通にしてくれ!」
「おいしくなかった?」
「…毎日だと飽きちまうからさ」
「つまり、おいしくないと…改良の余地がありそうね」
あんまり改良しないで欲しいと願う帰り道。
俺は不二子と並んで歩く。
繋いだ手がやけに暖かくて心地良かった。
→あとがき