第23章 You're the one for me ~forth~
驚いたままが固まっていると豊久は漸く今の状況に気が付いた。
「…?……………………あっ!!!俺っ…//い、今……///お前に……!」
見る見る内に赤くなる豊久の顔。
「や…そのっ!今のは…!!//…っうわ!!?」
後退りをしながらどうにか誤魔化そうとする豊久だったが上手い言葉が見つからない。
それどころか石に躓いて後ろ向きのまま川へ倒れ込んでしまった。
「つ…冷た…っ!!!」
そんな豊久をは目を丸くして見ていた。
今目の前にいるこの人は島津の若君にも腕のたつ武士にも見えなかった。
いつも私を勇気づけてくれる豊久様、その人なのだ。
次第に可笑しさが込み上げてくる。
「…ふ……ふふっ…!」
「!笑うなよ…………って……お前……声………!」
「……………!!」
小さな笑い声がから漏れる。
自身もその事にとても驚いた顔で豊久を見上げた。
そして確かめるように自分の唇にそっと指で触れる。
「わ…たし………」
戸惑っているとザブザブと音を立てて小川から豊久が駆け寄って来るのが見えた。
「と…」
豊久様、と呼ぼうとした瞬間は豊久の腕の中にすっぽりと収められる。
「良かった…良かったな、…!」
「………!」
ぎゅうっと音が聞こえそうな位豊久は強く抱き締める。
苦しいと少し感じたが、はそれを不快だとは全く思わなかった。
寧ろ受け入れるかのように豊久の背に腕を回す。
「と、豊久…様…」
「呼んで、もっと…」
「豊久様…」
「もっと、…」
「豊久、さま…う…ぅ…ひっく……」
もっともっと自分の名をその声で聞きたい。
どれ程この時を待っていただろう。
腕の中で静かに泣き出したをもう一度抱き締め直す。
愛しい、愛しい、愛しい。
弱々しく肩を揺らして涙する彼女を抱き締めながら、豊久は深く呼吸をしてそっと目を閉じた。
to be continued…