第23章 You're the one for me ~forth~
「はぁ……」
元気と勢いが取り柄のはずの豊久だが、ここ数日は心此処に在らずな事が多い。
先程も義弘に稽古をつけて貰っていたが、集中していないと怒られ早々に切り上げられてしまった。
(こんなんじゃ…強くなれない…!)
頭ではわかっていても心は村の方へ向いていた。
(会いたい、)
遠くに見える村の景色。
あそこに行けば彼女に会える、そう考えると胸が熱くなった。
「っ!……こんなっ!ウジウジしてるのは違う!俺らしくない!…行こう!」
頭をガシガシと掻いて勢い良く立ち上がる。
豊久は馬に跨がって村を目指した。
その姿を義弘は目を細めて見つめ、鼻で笑う。
「フッ餓鬼が…一皮剥けるか…?」
全てはお見通し。
豊久が義弘に認められるようになるにはまだまだ先の話になりそうだった。
義弘の視線には気付かず、豊久は村へと、の元へと急ぐ。
はと言うと兄の包帯を代えたり身体を拭いたりと献身的に看病をしていた。
「すまないな、」
謝る颯には首を振って笑顔を見せる。
「……また、笑えるようになったんだな」
「?」
「いや、何でもないよ」
が以前の様に笑えるようになったのは間違いなく豊久のおかげだ。
それを目の当たりにしているから颯も認めてはいるが、やはり大切な妹が他の男に影響されていくのは少し悔しく思ってしまう。
だが、豊久ならもしかしての声を取り戻してくれるのかもしれない。
そんな期待をしてしまう事もまた事実。
『野菜を買ってくる』
「ん…あぁ、気を付けろよ」
土間にそう書いて兄に伝えるとは家を出た。