第19章 horizon.(片倉小十郎)
「政宗様以外に何も見えておられない等、伊達の姫君として言語道断でございます」
「う…だって……」
「この世に政宗様以外の男子がどれ程いるとお思いですか」
「お、のこ…って…///」
胸を押し返そうとするだったが、小十郎の両腕にがっちりと掴まれていて解く事は出来なかった。
「そうですね、後は…様を想う人間が意外と近くにいるものだと思っていただければ」
今は十分にございますと、小十郎は眼鏡の縁を軽く指で押し上げた。
「……こ、こじゅっ…こじゅっ…!////」
「おや、この程度の抱擁で口もきけなくなるのですか?そんなに初でいらしゃったとは…」
眼鏡の奥で笑っている目にゾクリと背が粟立つ。
「これ以上したらどうなってしまわれるのでしょうね…?」
「……!!////」
耳元で囁く小十郎の低い声には思わず声が漏れそうになってしまう。
「冗談でございますよ、明日様が知恵熱でも出されたものなら私が政宗様に斬られてしまいます」
小十郎はそう言うと漸くを解放した。
は抱き締められて戸惑っていたはずなのに、いざ放されると急に寂しさが込み上げてきていた。
「政宗様がお相手出来ない分、この小十郎が様の舞いも笛も見て差し上げましょう」
「…本当?」
「えぇ、ですが私は厳しいですよ?」
「ありがとう!小十郎っ!」
花のような笑顔。
それが今は自分に向けられている。
これだけでこんなに満たされるものなのだろうか。
小十郎は満足気に目を細めた。