第16章 You're the one for me ~First~
炎が消えたのはもう燃える箇所が残されていない程に家を焼き付くした後だった。
「父様…母様……」
焼け焦げた家の前には立ち尽くしたまま、ただ時間だけが過ぎていく。
家族を失った喪失感。
これから自分はどうすれば…それすらも考える事が出来ずにいた。
「…!!」
「……っ?!」
ゆっくりとが振り返った先には
「………兄、さま…?」
「あぁ…!…!!無事で良かった!」
「颯兄様…!」
失ったと思っていた兄が目の前に現れ、安心したのかはその場に座り込む。
の兄、颯(はやて)はより4つ歳上の兄だった。亡くした姉はその更に1つ上になる。
「兄様…っ、父様達が…!!私…助けられなくて…私っ!!あ…あぁ…!!………っ」
「…!?おい!しっかりしろ…!」
涙と共に叫んだ後、まるで糸が切れた人形のようにはそこで意識を手離した。
「颯!お前は無事だったか!良かった…ちゃん…大丈夫か?」
「おじさん…!俺はちょうど村まで出ていたから…父様たちは何故…!くそっ…!」
気を失ったを抱き締めながら颯は顔を歪める。
「…颯、実は村の衆が山賊の仕業だって教えてくれたんだが」
「山賊…?」
「あぁ、最近ここいらでデカイ顔してる奴等でさ…この家に押し入るのを見たって…」
「金か…や姉上も狙われていたか…!」
と姉の美しさはこの一帯では知らない者はいないほど有名だった。
その事が山賊の耳に入ったとしても不思議ではない。
「…だけは俺が死ぬ気で守るよ、おじさん本当にありがとう」
「俺は何も…!」
「放っておいたらコイツ燃えてる家に飛び込んで行ってたろ…?止めてくれてありがとう」
「颯…」
静かに目を閉じているを見つめながら颯は農夫に礼を言った。