第11章 誘惑ストラテジスト(小早川隆景)
毛利家の侍女として仕えてふた月、仕事にもようやく慣れてきた。
最近では元就や隆景の書物の整理もするようになった。
信頼されている、大切な書物の管理を任される度にそう実感出来て嬉しかった。
「ここにいたのか!探したぞ!」
「も、元春様…!」
「さぁさぁ、今日こそは私の寝所に…!」
「えと…あの…私は………」
幾度となくこうして元春や隆元から求愛されている。
愛らしい外見と読み書きの出来る才、そして控えめな性格である彼女を男達が放っておくはずがなかった。
「元春兄様」
「…!!」
「たっ…隆景!」
突如声を掛けられ動揺する元春の前に隆景が現れる。
爽やかな笑みを浮かべたまま話を続けた。
「父上がお呼びです」
「そ、そうか…今行く!」
慌ててから離れる元春。
はホッと小さく息を吐いた。
「…本の整理は終わりそうですか?」
「はっはい…!今日中には終えられそうです」
「そうですか、……、指が」
「え…?」
隆景はそっとの右手を取った。
気付かない内に本で指を切ってしまっていた。
「これくらい…舐めれば、治ります…って隆景様!?」
そっとの手を取った隆景はそのまま切れてしまった指を口に含んだ。
「た…隆景さ、ま…///」
「これで良いでしょうか」
「………は、い…///」
(指が………熱い……)
は手を隠すように胸の前で握った。