第39章 無双学園生徒会執行部。『February』(逆ハー)
会長は、井伊くんを生徒会へ誘った。
驚く皆とは対照的に井伊くんは表情を崩さず「構いません」と言葉を返した。
あれから1ヶ月。
あまり他の人と会話をしない彼だったけど、天性のカリスマ性を持っているのか井伊くんの事を周りの人が放って置かなかった。
実力テストもアッサリと上位へと名を連ね、体育での活躍を聞きつけて各運動部からの誘いは後を絶たない。
真田会長は、これを見抜いていたのだろう。
「すごい……それに比べて私は…」
あの、真田会長の勧誘の後。
私にも生徒会雑務ではなく、会計のポジションの話があった。
それは今の、三成先輩の仕事。
私に務まるはずがないと返事はまだ保留にしてある。
それに『三成先輩の後』、この響きがより一層寂しさを掻き立てる。
来年度、そこに先輩はいないよって突き付けられたみたいだった。
「だったら断れば良いのに…私は…」
はっきりと、断れなかった。
……違う、断りたくなかったんだ。
生徒会のこの場所が、いつのまにかとても大切で居心地の良い場所になっているから。
「…どうした?」
「三成、先輩……」
そうだ、今は学年末テストに向けて図書室で勉強してたんだ。
「さっきから一問も進んでないぞ」
「あ…はい、ごめんなさい…」
「いや、謝る必要はないが……、信之の話で悩んでいるのか?」
寂しいんです。
会計の仕事、務まるか不安なんです。
でも、一緒にいる時は楽しくいたいんです。
貴方を困らせたくないんです。
……それでも、寂しいんです。
「いえ、問題が難しくて。先輩、ここ、聞いてもいいですか?」
「……あぁ」
頭の中のまとまらない言葉達を奥へ押し込んで三成先輩へ笑顔を向ける。
三成先輩は何かを言い掛けて口を閉じ、視線を教科書へと落とした。