第37章 無双学園生徒会執行部。『December』(逆ハー)
一年に一度、冬の恋人たちが最も寄り添い合うこの聖なる日。
晴れて両想いになれた三成先輩と出掛ける計画を立てていた。
はず、だったのに……っ!
「ごめん、なさい…っ、先輩…」
「俺の事は気にするな、今は治す事だけを考えろ」
「うぅ…、はい……」
出掛ける日、つまりクリスマスイブ当日。
体育祭、文化祭と怒濤の日々から開放された疲れが一気に来た私は熱を出した。
やらなければいけない事があると言うのは健康維持にも繋がるんだと初めて知った。
そして気を抜いたらこの様だ。
今朝方電話で三成先輩にキャンセルを伝えた。
楽しみに、していたのに…。
話の流れで家に一人だと言うと、三成先輩はすぐに駆け付けてくれた。
「移したら大変です、から…」
そう断ろうとしたら、盛大に怒られた。
「馬鹿、こんな時に遠慮して何の得になるのだ」
「でも先輩、受験生……」
「受験?そんなものとっくに推薦を取れているに決まっているだろう」
「そ、そうでした…!」
「いいから、横になれ」
受験生と言う身を案じたものの、それも一蹴される。
三成先輩も真田会長も清正先輩も、それぞれ大学から声が掛かって進路を決めていた。
優秀な先輩方。
来年隆景くんは余裕だとして、自分はどう足掻いたって同じ様にはいかないだろう。
色々考えていたら、また頭がボーッとして来た。
先輩のお言葉に甘えてベッドに横になることにした。
三成先輩が自分の部屋にいる事に少し慣れてきたせいか、不意に睡魔が襲ってくる。
「眠れるならそうした方が良い。何か欲しいものがあるなら買ってくる、飲み物はいるか?」
「………?」
「……?」
「…え……?」
それは、完全に無意識だった。
立ち上がろうとした三成先輩の服の裾を、私の手がしっかりと掴んでいる。
自分でも驚いてしまった。
「ごめん、なさい……」
慌ててその手を離して引っ込める。
そのまま布団の中に隠そうとしたけれど、それは叶わなかった。
「行くな、と言う意味か」
一回り大きな三成先輩の手が私の手を掴む。
先輩の手がヒンヤリとしているのか、私の手が熱いのか。
どちらにせよ、その冷たさが気持ち良かった。