第34章 無双学園生徒会執行部。『September』(逆ハー)
「美味しかったー…」
ふーっと息を吐きながら豊久くんは芝生にゴロリと寝転がる。
私もゴミをまとめて鞄にしまった。
「豊久くん、今日はありがとう。連れ出してくれて…初めて学校サボっちゃったけどすごく楽しかった!」
ハラハラしたけど、楽しかったのは本当。
私は豊久くんに笑顔でお礼を言った。
「先輩…」
「…!」
ふと名前を呼ばれ首を傾げると、芝生に置いていた手に豊久くんの手が重なる。
「と、豊久くん…?」
「困らせたいワケじゃないけど聞いて、俺の話」
重ねられた手から伝わる熱と緊張。
私はその手を握り返す事も、振り解く事も出来ずにいた。
「……俺、先輩の事が好きだ」
突然の言葉。
朝サラリと聞いてしまった『もしかして』はこれで確信へと変わってしまう。
まるで太陽に当てられたみたいに眩暈を起こしそうになった。
「先輩と三成先輩に夏休みになんかあったんだって事ぐらい俺にもわかる」
「豊久、くん」
「でも何があったかは聞かない、俺」
真っ直ぐに見つめるその目はいつもの子犬みたいな目なんかじゃなくて。
「……と、豊久くん」
「今日は…お願いはしない、俺がしたいからするんだ」
そう言って私を抱き寄せた。
「……っ///」
お願いとは、恐らくこのハグの事。
豊久くんにこうして抱き締められるのは初めてじゃないけれど、いつもみたいな勢い任せに飛び付いてはこない。
壊れ物を扱うみたいに、そっと包まれて、
ゆっくりと力を込められる。
「先輩が元気ないの嫌なんだ、俺」
「………」
「笑ってる顔、好きなんだ」
耳元で囁かれ、背中がゾクリとする。
「返事は、ちゃんと考えてからでいいよ」
私の気持ちは、
一体何処にあるんだろう?
清正先輩と豊久くんの告白。
それに、三成先輩とのキス…。
私の乏しい恋愛経験からでは今後どうするのが正解なのかなんてわかる筈もなくて。
私の頭はもうパンク寸前です…!
帰り道、豊久くんはまるで告白なんてなかったみたいに普段通りだった。
私はと言うと、何を話して帰ったかほとんど覚えていなかった。
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