第30章 無双学園生徒会執行部。『June』(逆ハー)
6月になるとどうしてこう急に湿度が増すのだろう。
この問題をどうにもならないとわかっているのに毎年考えてしまう。
そして私の髪もどうにもならない。
湿気と戦う女子もいる中、頑張れない私はこの時期髪は結んでしまうしかないのだ。
玄関を出る前に立て掛けてあるビニール傘を持つ。
今日は午後から広い範囲でにわか雨の可能性があるとテレビが言っていた。
「さーーーん!!!」
学園の昇降口に着いたところで後ろから大声が聞こえる。
大型犬が走ってくる……いやいやいや、あれは。
「島津君……!!」
抱き着いてきた前科が彼にはあるので思わず身構える。
案の定3メートル手前で島津君は思い切り両手を広げている。
「島津君、ストップ!!」
「!」
後1歩で腕の中と言うところで急ブレーキ。
両手を広げたまま島津君はピタリと止まった。
この様子を周りにいる生徒達はバッチリ目撃している。
されるがままに抱き締められていたらどうなっていた事か。
「島津君…みんな見てるから、ね?」
「俺は気にしてないよ?」
「いや、私は気にしてるから…」
口を尖らせながらも渋々腕を下ろした彼を見てホッとする。
「さん」
「ん?……………!!」
振り向いたのがいけなかった。
島津君は思い切り私を抱き締めた。
フワリと香る柔軟剤の匂い。
じめじめとした空気を吹き飛ばすような爽やかな香りだった。
…ってそうじゃなくて!!!
「ちょっと…島津君…!!」
「…うん、ごめん。でも我慢できなかった!」
パッと私を放すと眩しい程の笑顔を見せる。
ごめんって言ってるくせに悪びれた様子が全然見られない…。
「じゃあ!また放課後!!」
「………なんなの、あれ」
ポカンとして彼の背中を見送っていると背後から声を掛けられる。
「ねぇ」
「……?」
「ちょっと話あるんだけど」
「………」
こう言った事もその内あるだろうなーとなんとなく予感はしていた。
ちょっと派手目の化粧の先輩方3人。
私を囲むように立つこのお姉様方に見覚えなどない。
HRは諦めるか、そうバレないように溜め息を小さくついて素直に3人についていった。