第28章 You're the one for me ~Final~
宴は夜通し続きそうなほど人々の熱は覚めやらない。
宴の主役を颯に任せて、豊久とは城へと戻ってきた。
足を運ぶは豊久の居室。
灯りをともしていない部屋に村から溢れるたくさんの松明の灯りが入り込む。
薄暗いはずの部屋が橙色で温かく照される。
そこに星の光も寄り添って幻想的な雰囲気が漂っていた。
「綺麗……」
窓辺から村を見下ろしたが小さく口にした。
その姿が何処か儚げで、豊久は思わずの手を取った。
消えてしまうのではないかと思う不安を払拭してくれる温かな体温に豊久は安心して息をつく。
「…豊久、様?」
「ごめん、なんかが…消えちゃいそうに見えて」
パッと離した豊久の手を今度はが掴む。
貴方の側にいますと、伝わるように強く握り締めた。
「宴が始まる前に…兄と、話したんです」
「話したって…?」
「旅の一座として各地を巡って来ましたが、それももう終いにしようと」
「…」
「村の人達には大きな恩があり、この地には父様達の魂も眠っています…そして何よりーーー」
握り締めた豊久の手を自分の頬へと導き、手を重ねる。
「……何より此処には貴方様がいる」
窓辺にいたの頬がほんのりと紅く染まる。
それは、村からの灯りのせいだけではない。
「俺も、の側にいたい。誰よりも近くで守る!歌声も、笑顔も!」
初めて出会った時と同じ眩しいほどの笑顔。
あの時は目を背けて俯くしか出来なかっただったが、今は違う。
その眼差しを真っ直ぐに受け止める事が出来る。
「あ、あのさっ…//もう一回、そのしていい…?」
「?…何をですか?」
「えっとその、く…口付け…///」
先ほどまでとても勇ましく自分を守ると言っていた人が、真っ赤になって口をもごもごさせるものだから。
は小さく笑って豊久に一歩近付いた。
「私も…そう思っておりました」
村から聞こえる賑わいも、灯りも、星空さえも遮断して二人は瞼を閉じる。
目の前の愛する人だけを感じられるように。
END