第16章 16日目
会社では仕事を終え、そそくさと帰る人達。只今PM18:00、普段なら皆普通に残っている時間なのに…何で私と年齢層高めの方々ばかりなの!
「は帰らないのか。」
私が周りをキョロキョロしていると上司から声を掛けられた。
「え?あ、はい、まだ少し書類が残ってまして…」
「早くしないと、ケーキ売り切れるぞ!」
「…ケーキ?」
「お前、クリスマスに苺のケーキはいるだろうが!」
く、くりすます!…忘れてた…二宮くんという人がいるのに、初めてのクリスマスなのに…カップルの一大イベントなのに…!私の女子力…終わってる。
一度携帯を見てみる。二宮くんからの連絡は、ない。当たり前か、まだお仕事に決まってる。これまでそんな話が出てこなかった時点で、二宮くんはクリスマスを私と過ごすなんて考えていないんだろう。
なんか寂しい。(忘れてたけど)
「さては、一緒に過ごす人がいなくて仕事してるのか?」と意地悪な顔した上司。(ドキドキするような雰囲気では決してない)
「そ、そんなこと…帰ります!」
図星過ぎて仕事は明日することにした。これも全部上司のせいだ!(ということにしておこう)
会社を出るともう真っ暗でピューっと吹く冷たい風がコートの隙間から入ってくる。
「…さむっ」
オフィス街にはスーツ姿で寄り添うカップルの姿にまた心が寒くなる。あ、こんなときは上司の言ってたケーキを買って帰ろうとスイーツショップに入った。
「誠に申し訳ありません、本日苺のホールケーキは終了してしまいました。」
「…あ、そうですよね。」
「よろしければ、カットケーキのご用意はありますが…」
ケース内を見ると苺のついたショートケーキが並んでいた。
「…では、そちらをお願いします。」
「かしこまりました。おいくつご用意致しましょうか?」
そんなの、ひとつに決まってる。
だって二宮くんはお仕事だから。