第15章 15日目
優しく抱き締めてくれたのは住久くんなのに、私の頭の中には今、抱き締められているこの状況よりも二宮くんのことでいっぱいになる。
「…おち、ついた?」
住久くんが私の肩に手を添えて、体を離した。
「…」
二宮くんが一瞬だけ唇を噛んだあの顔が忘れられない。
「…?」
「…え、あ、うん」
「大丈夫かよ、」
「うん、ありがとう。住久くん、ごめん
今日は帰るね。ほんとにごめん。」
「送るよ。」
「うんん、大丈夫、タクシーで帰るから。」
ダメだ、ひとりになりたい。
「…わかった、また連絡する。」
住久くんに精一杯の笑顔を見せてまたね、と手を振って店を出た。店を出ると二宮くんと初めて出会ったあのベンチに座る。
「……」
わかってる、これが二宮くんと付き合うってことだ。傍に居て欲しい時に傍に居れない。あの時の二宮くんのあの行動は正しい。たぶん、後ろにいた人は新しいマネージャーさん。下手な行動で勘ぐられたら、そっちの方が大変だから。
わかってる、わかってるけど
一人で泣くのは寂しい。
なんで泣いているのかもわからなくなる。
まだ赤い手首が痛いから?
男の人が怖かったから?
それとも
二宮くんに避けられたから?
傍に居てほしいのは二宮くんだけど
それが出来ないことを
今更悲しんでも仕方がない。
私は涙を拭いて腰を上げる。
帰ろう。