第7章 7日目
今日は決めた、何がなんでも二宮くんには負けない。絶対流されない。絶対「はい」って言、わ、な、い!
私は珍しく怒っている。
「さん、さーん」
「…」
「ちょっと、なんで無視すんの?」
ソファに座る私の真正面で床に正座する二宮くん。自然と上目使いでこっちを見る顔は、まるでお預け状態の子犬。
ぎゅ、ぎゅって…したい。
だめだ、だめだ、だめだ私、負けちゃダメ!
「…」
「…」
「!!」
二宮くんが私の膝にそのまま顔をつけた。ビックリして体が揺れたけど、なんとか動揺を隠した。
少し伸びた薄い茶色の髪、こちらから横顔の高い鼻が見える。背中が丸まった二宮くんがなんだか泣いているように見えた。
…やっぱり出来ないや。
私がその柔らかい髪の毛を優しく撫でると二宮くんはパッと顔をあげた。涙は出ていなかったけど、泣きそうな顔をしてたから、胸がギュッと締め付けられた。
「…」
「…ごめん、ね。」
「…なんで怒ってるの、」
あまり思い出したく、ないこと。
今日、某テレビ局でお仕事だって言ってたはずの二宮くんを外で見かけた。話しかけようと思ったけど、出来なかった。隣には綺麗な女の人がいたから。
気になって気になって気になって、つい二人の後をつけてしまった。それがまた私の不安を煽る。見るんじゃなかった、と後悔するには遅かった。
綺麗な女の人と有名なアクセサリーショップに入って行った二宮くんは、少ししてショップの小さな袋を持って出てきた。
持って…あげるんだ。なんて紳士的なんですか。