第24章 24日目
「うんうん、わかってるよ。嬉しいんだね。」
「・・・・・・は、い。」
私の頭にポンポンと優しく触れる。
二宮くんはなんでもお見通しなんですね。
「・・・あーあ、盈盈一水、」
「はい?」
「連理之枝。」
「え?」
二宮くんが話す言葉が全くわからず、まるで呪文のように聞こえる。
「もう、全然だめ。」
「二宮くん、ほんとは四字熟語、得意でしょ?」
「ふふっ、さあどうでしょう。」
何かを企んだようなあの含み笑いで私を見る。
ずるい...ずるいです。
3時間後、二宮くんがじゃあまたねと私の家から出て行った。あーあ、また一日千秋の日々が続くのか。そう思っていたら携帯からメール受信の音がなる。
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二宮くん
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TO.
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愛別離苦。愛執染着。
これで次会う時まで我慢できるでしょ?
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二つ並んだ漢字だけの文字の意味がわからない私は四字熟語の本を引っ張る。
その意味を見つけて、なんだかむず痒くなって笑いが出る。そこに書いてあるのは、二宮くんが普段言わないような言葉。笑ったせいか、胸がジワジワと暖かくなる。
これがあれば私、何ヶ月もあなたを待ち続けられそうです。
『 甘い四字熟語を教えてあげる 』END.
「朝雲暮雨(ちょううんぼう)」・・・男女が愛し合い深い仲になる事。
「盈盈一水(えいえいえいっすい)」・・・愛する人に会えない苦しさ。
「連理之枝(れんりのえだ)」・・・深い愛情で結ばれた男女の事。
「愛別離苦(あいべつりく)」・・・別れるかなしみやつらさの事。
「愛執染着(あいしゅうぜんちゃく)」・・・男女の愛欲の執着。愛にとらわれる事。