第23章 23日目
「二宮さん、」
マネージャーに呼び止められた。
「ん?」
「今日悪戯電話らしきものが事務所にかかってきたらしいのですが、どうもおかしくて。」
「・・・何?」
「悪戯にしては凄い丁寧な男性だったらしいんですけど、二宮さんにスミヒサと言ってもらえれば伝わるからと、会社の連絡先をスタッフに託(ことづ)けてるんですよ。」
スミヒサ、くん。久しぶりに聞いた名前。
そしてこのタイミングで連絡があるってことはのことで何かあるに違いなかった。
その連絡をしていいものか。
住久くんと繋がりを持ってしまえば、今のこの状況が変わってしまう気がした。ここまで耐えてきたのに、ピンと張った糸が切れてしまう様な気がした。
だけど、
「・・・連絡先は、どこにあんの。」
「あ、一応伺ってから処分しようと思って、事務所に置いてあります。」
「それ、携帯に送っといて。」
「え!?あ、お知り合いなんですか?」
「うん、まあそんなとこ。」
と連絡を取らずに過ごして1ヶ月を過ぎた。1度だけ、着信が残っていたのにかけ直すことができなかった。本当なら会って直接「別れ」を告げることが正解なのに、まだそれが出来ずにいた。
相葉さんと潤くんの前であんなこと言ったのに、いざとなると怖くて、自分からを手放す勇気がなくて、このまま自然消滅すればいいと、弱い自分がでてしまった。
でもこのままでいいはずがない。
住久くんのためにも
のためにも
自分のためにも。