第20章 20日目
「うん、それと、」
「まだ何かあったっけ?」
「うん、大切な、」
そう言って私の左頬にチュっと音をたてる。
「!」
左の頬を押えると二宮くんが
「今はこれで我慢する。止まらないからね。」
そう言って意地悪な顔をして部屋を出て行った。
パタン…と扉が閉まって、もう一度二宮くんを見ようと扉を開ける。後姿を見送って、見えなくなるとまた部屋へ入った。
さっきと全く同じ。見送った姿も、部屋に残る匂いも全部さっきと同じなのに、今は1人でも涙は出ない。
二宮くんは私の心も操る魔法使いなのかもしれない。
『 3日間の同棲生活 3日目 』END.
せっかくと出かけようと思ったのに、急な仕事の打ち合わせが入った。どうしても今日じゃないといけないらしい。こんなタイミングで。
仕事を終えて家に帰るともう夜中の1時だった。
すぐ帰れるかと思ったのに。久しぶりの部屋は1人でいるには広くて、寒くて、なんだか寂しかった。
一人で居るのが好きだった私が寂しいだなんて。きっと服に染みついたの香りのせいだ。
ここ2日間はを抱き枕代わりにして寝ていたから、今日はこの香りがないと寝付けないかもしれないと不安になった。
いやちょっと待て、自分の服を抱きしめながら寝るの?うん、やめよう。
最近、に依存しすぎて怖くなる。