• テキストサイズ

Sweet Love* Part3

第15章 *俺が苦手で好きな君 feat.火神


「火神くん、体育館まで一緒に行きませんか?」

にこにこと嬉しそうに微笑みながら、遠野は俺に話しかける。

だが俺は、遠野の態度とは正反対に不機嫌そうにしていた。

「嫌でもそうするんだろ。」

「うーん…遠回りするのは変ですし、わざわざ時間をずらす意味もないです。嫌なら数歩後ろを歩くというのはどうでしょう?」

「ああもう、勝手にしろよ…。」

俺は遠野が苦手だ。

それは何か嫌な思い出があるから、などではなく、俺の苦手な犬に似てるから、という理不尽な理由だけどな。

席を立って廊下を歩くと、言った通り数歩後ろを歩く遠野。

好きにしろとは言ったものの…落ち着かない。

「おい、遠野。」

「なんでしょう?」

「んな中途半端なとこじゃなくて、隣歩けよ。」

ぶっきらぼうな物言いだったのに、遠野は笑みを浮かべた。

「ありがとうございます…っ!」

遠野が隣に来ると、何故か安堵してしまって。

苦手なのに、矛盾している自分の気持ちに、俺はため息をついた。

「わけわかんねぇ…。」

いや…本当は分かっている。

矛盾してないことも、自分の気持ちがなんなのかも。

俺は遠野が苦手だ、だけど嫌いではない。

本当は──



「火神くん?」

急に考え事を始めた俺に、遠野が首を傾げる。

こいつの様子を見ると、まだ気の無い振りをしてもいいかな、なんて思ってしまった。

今はまだ、距離が遠すぎる。

「なんでもねぇよ。ほら、行くぞ。」

少し乱暴に、遠野の手首を引っ張って、俺は少し足を早めた。


*俺が苦手で好きな君*

犬みたいなお前が苦手で、
でもはにかんだその笑顔が好きで、
俺はお前に、とことん弱いみたいだ。
/ 92ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp