第13章 *恋の合図 feat.黒子
僕は影が薄い。
だから、視線にも気づかれないと思っていた。
…いや、実際そうだったから、まさか例外がいるなんて思わなかった。
だけど今日僕は、密かに想いを寄せていた彼女の横顔を見つめて…
──視線が合った。
「…?」
「…っ!!」
首をかしげる彼女から、無理矢理視線を外す。
今はもう、見るべきじゃなさそうですね…。
そう思って、僕は授業に集中しようとして。
「……。」
今度は逆に、視線を感じることに気づいてしまった。
確実に、さっきまで見つめてた…遠野さんだ。
見てはいけない、そうは分かっているものの、気になって視線を戻してしまう。
「!……っ」
すると彼女は、少し頬を赤らめたあと、にこりと微笑んで黒板に向き直る。
初めてのことに、僕は彼女から視線を離せなくなってしまった。
*恋の合図*
愛しい彼女との数秒間。
言葉はないけれど、
それは確かに、恋の合図だった。