第1章 Pr.雨模様の晴天柄
「おーい、聞こえるか」
ボクの意識はその気だるそうな声に、無理矢理起こされた。
「お、起きたな。睦月 潤だな?」
「……ん」
頷きながら、倦怠感の残る身を起こす。
「お前、いま自分がどうなってるかわかるか?」
「……死にかけてる」
「惜しいな。死にかけ、どころの話じゃないぞ。お前はいま、死んでるんだ」
「死んで……?じゃあ、ここ、あの、あなた、誰ですか」
「おお、お、落ち着け。順を追って説明してやる。
ここは、なんだ、その、特定の死んだ命を引き込む場所だ。あの世じゃないんだ。そっ、それで、俺は、お前をどうにかして生き返らせてやる存在だ」
「えっ?え?」
「だから、……お前にもう一度生きるチャンスをやるって、いって、んだよ」
目の前の赤いジャージの人がいっていることに頭が追いつかない。
死んだけど、ボクは生き返れる?の?
「ただ、一つ条件付き、なんだ。
俺がお前に力を分け与えて、お前を生かすんだ。だから、その力が馴染むまで、基本的に、お前の、そばにいなきゃならない」
「……うん」
「だから……当分はお前と同じところに住まなきゃいけない。あっ、特に、不自然な点はない形で、ちゃんと理由付きでの形になるから、安心してくれ」
そりゃあ、お父さんと、お母さんに、迷惑がかからないなら、いいのだけれど。
「……でっ、ど、どうだ?受ける、のか?」
「あっ、う、うん……」
死んじゃったのに生き返ることができるなら、なんでも、いい。
死んじゃってお父さんとお母さんに迷惑をかけたくないのだ。
「……わかった、おねがい……」
つぶやくように言うと、青年は頷いた。
「……じゃあ、よろしくな。俺は《掛ける蛇》、如月伸太郎だ」
「……うん」
頷くと同時に、意識が失われるような、叩き起こされるような、妙な感覚に襲われる。
そして、ボクはそっとその夢のような空間から抜け出した。