第13章 -新旧光対決 Part2-
「すみれ、もう帰るか?」
体育館を出て、
皆で駅に向かって
歩き出そうとすると、
虹村さんがわたしに尋ねた。
大ちゃんとお姉ちゃんは…
まだ帰れないよね…。
「はい。」
「じゃあ、送ってく。」
「え?でも…」
「どうせ、同じ方向だろ?」
虹村先輩は
わたしのほうを見なかったけど、
わたしが気にしないように、
そうやって言ってくれたんだと思う。
やっぱり優しいなぁ…。
「すみれちゃん!
もっかい連絡先交換しようぜ!」
「もっかい…って…。
そもそも高尾さんと
連絡先交換してませんてば…。」
駅に向かう道中、高尾さんは
ずっとそんなことを言っていたけど、
結局高尾さんと
連絡先を交換することはないまま、
駅に着いた。
わたしと虹村先輩は、
他の方たちと逆方面だったので、
改札を通ったところで、
お礼を言って別れ、
帰りは虹村先輩と2人きりだった。
「すみれ、気をつけろよ?」
試合観戦をしていた人たちが、
一気に電車に乗り込むので、
到着した電車に人が一気になだれ込む。
「うわ…は…い!キャッ…」
人波に押されて、
バランスを崩してしまうが、
今日のわたしは倒れなかった。
「こら!
全然気ぃつけてねーじゃねぇか!」
ことばとは裏腹に、
虹村先輩が優しく支えてくれたから。
「ごめんなさい…」
「ま、こんだけ混んでたら、
しかたねぇよな。
ほら、こっち来い。」
…っ⁈
虹村先輩がわたしを簡単に引き寄せ、
わたしは虹村先輩の腕の中にいた。
わたしたちは乗ったドアと
逆側まで押し込まれていて、
ドアを背にしているわたしの
目の前には虹村先輩の
制服越しの胸板があった。
いわゆる壁ドン状態というか…
密着しすぎだよっ!
顔…あげられない…!
「大丈夫か?」
虹村先輩はわたしの
表情を確認するように
右手でクイッとわたしの顎を持ち上げた。
「だ…大丈夫…です!」
「…っ⁈(その顔はダメだろ…)
…キツかったら、言えよな?」
そう言うと虹村先輩は、
急にそっぽ向いてしまった。
虹村先輩と一緒に帰るの…
いつ以来だろう…。
初めて会ったときは、
お姉ちゃんと間違えられたっけ?
わたしはいつのまにか
虹村先輩との出会いを思い出していた。