第10章 -虹色の先輩-
『すみれ‼︎どうしよう⁈
青峰くんが来てないの‼︎』
『えぇ⁈』
小声で電話に出た意味がまったくない。
わたしは大声を出して、
思わず立ち上がってしまった。
『すみれ、今どこにいる?』
『もう会場だよ‼︎観客席にいる!』
お姉ちゃんはどこにいるんだろう?
控え室…?
お姉ちゃんの姿を探すけど、
見える範囲にはいないらしい。
『連絡は一応ついたんだけど…
もう試合始まっちゃうから、
わたしは迎えに行けないし…
すみれ、会場の外で
青峰くん、捕まえてくれないかな?』
『え…?』
『せっかく観に来て
くれてるのにごめんね。
あいつ、来るって言ってたけど、
どこで気が変わるかわからないし…』
お姉ちゃんの声が震えていた。
『わかった‼︎
ちゃんと大ちゃん連れてくるよ!』
『すーちゃん…ありがとう。』
『お姉ちゃんは心配しないで、
試合、頑張ってね!』
電話を切り、
わたしはバッグを持った。
「すみれ⁈どうした⁈」
虹村先輩は不思議そうに、
わたしの腕を掴んだ。
「大ちゃんが…来てないみたいで…」
「…っ⁈」
「一応、向かってはいるみたいなんで、
探してきます!」
「おい⁈」
わたしは虹村先輩におじぎをし、
虹村先輩の腕から離れた。
「大ちゃん見つけたあとは、
またココで試合観させてください。」
わたしは宮地さんの前を抜け、
秀徳の皆さんにもおじぎをし、
観客席を後にした。
大ちゃん…お願いだから…
試合に来て…。