第7章 -ご機嫌ナナメの青色の彼-
え…⁇
今の…⁇キス…⁇
わたしは大ちゃんに…
キスされていた。
「すみれ…おまえ…」
…⁈
沈黙を破ったのは大ちゃんだった。
キスをした大ちゃんは、
わたしを見つめていたが、
暫くして、またわたしを抱き締めた。
「海常に行くのか…?」
「え…⁇」
「じゃあ…秀徳か…?」
大ちゃんに抱き締められたままだから、
大ちゃんの表情は見えないけど、
大ちゃんの口調から、
苦しそうな表情だというコトは、
容易に想像できた。
「まだ…何も決めてないよ?」
「んじゃ…おまえ…とう…」
「…‼︎大ちゃん‼︎」
わたしは大ちゃんのことばを遮り、
大ちゃんから少し顔をはなし、
大ちゃんを見つめ、
大ちゃんのホッペにギュッと手を当てた。
「…っ⁈」
「大ちゃん‼︎なんか暗い‼︎」
「はっ⁈つか、はなせって…」
大ちゃんはわたしの手を
簡単に振りほどいてしまう。
「もう。何かあったの?」
わたしはまた大ちゃんの頭を撫でた。
優しく優しく…
気持ちが伝わるように…。
「なんもねーよ。」
「そうかなぁ?」
わたしは優しく撫でつづけながら、
大ちゃんの顔を覗き込む。
「…っ⁈なんもねーって‼︎
つぅか、本当に、
こいつに連絡してねーんだな⁈」
大ちゃんが高校のコトから
話をそらしてくれたので、
わたしは心底ホッとした。
「してないってば。
緑間先輩の友だちだけど、
一瞬しか話したコトないんだよ?」
わたしがそう言うと、
大ちゃんは少しだけ
目が柔らかくなった。
「そのメモ、大ちゃんにあげるよ?」
「は⁈いるかよ⁈」
そう言うと、大ちゃんは、
そのメモをビリビリに破って、
ゴミ箱へ捨ててしまった。
「なんか…悪かったな…」
大ちゃんは小声で謝ると、
もう一度わたしを抱き締めてから、
自分の部屋へ戻っていった。
”んじゃ…おまえ…とう…”
大ちゃんのことばのつづきは、
簡単にわかってしまった。
”桐皇に来いよ”
だから、わたしは
わざと明るく話を変えた。
本当はキスをされたコトが
気になってしかたなかったのに…。
でも…
”桐皇には行かない”
そう決めているのに、
大ちゃんに言えなかった。