第21章 終幕
現世のある時
日本の何処か
病院の一室で──
「おぎゃあ おぎゃあ」
新たな生命が
産声を上げる。
「可愛い女の子ですよ」
喜びに満ちた
男女の話し声。
赤子の母は言う。
「名前はもう決めてあるの。
この子の名は……薺(ナズナ)」
赤子の父は笑った。
「ナズナ?雑草じゃないか」
「あら、雑草だって立派な
花を咲かせるのよ。それに、
薺の花言葉がとても素敵なの」
「ふうん?」
母は産まれたばかりの
我が子を愛おしそうに
見つめて、囁く。
「……貴方に全てを捧げます。
いつか、この子にもそんな
恋をして欲しいなって思って」
「気の早い奴だな」
「そうかしら?」
この上なく幸せそうな男女は
いつまでも、いつまでも
可愛い我が子の話題に
花を咲かせるのであった。
【鬼灯の冷徹】
雑草ノ花___了