第18章 CHERISH YOU
「ううう……馬鹿力。
変な角生えてる癖に」
相も変わらず減らず口を
叩く少女を、しばらく
見つめてから鬼は言う。
「修行して出直して来い」
それだけ告げて
さっさと立ち去ろうとする
着物の裾を、少女は再び
引っ張って鬼を振り向かせた。
「……何ですか」
「これ。あげる」
「……?」
少女の手に握られていたのは
小さな小さな地獄ノ花。
【真紅の曼珠沙華】
一体いつからその手で
温めていたのか──……
幼い手の中で咲くそれは
くたりと茎を折って、
まるで溜息を吐いている様だった。