第16章 【ティファニーで夕食を】
「……鬼灯様?」
白い頬を赤に染めている
彼の名を呼んでみると、
鬼灯様は照れた様子で言った。
「貴女と居るとつい
素が出ちゃいますね」
ほんの数秒だったと思う。
気恥ずかしい沈黙が
私達の間を流れていって、
それから──……
「ひゃあっ!」
突然蜜口を弄られた私は
素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「なっ……いきなり
何し、て……ああっ」
「いやホラ。なんか
恥ずかしかったんで」
鬼灯様は手を休めることなく
大真面目な顔で言ってのける。
その愛撫は先程までの
優しいものとは違い、
まるでイタズラをする
子供のような眼で
彼は指を動かした。