第1章 1.私
私の名前は彩芽。名字は嫌いだからあまり名乗らないので、名前だけで勘弁してもらいたいと思う。
年齢は15、中学生。要するに受験生だ。わけあって両親とは離れて暮らしている。当然だけど性別は女。
今は、夏休みだし、ということで、たまには出かけようと思って、買い物に行って──そして、もう少しでよく行くショッピングセンターに着くというところで、
交通事故に遭った。
聞けば相手は無事だったそうだが、私は即死級の致命傷。そのせいでこんなおかしな夢を見ているのだろう。
真っ暗な空と透明な床の続く空間で、私は黒い髪に黄色の瞳の青年に話し掛けられていた。
「いいかー、もう一度しか言わないからよく聞けよー。運がいいことにお前は女王の目に止まった、生き延びられるかもしれないぞ」
気だるそうに青年はそう言う。私はヘンテコな夢を見てるなあと思いながら、虚ろに働かない頭で彼の話を聴き続ける。
「俺と契約しろ。新しい女王のシステムで、俺と契約して俺と住むなら、お前の命は助けてやろう」
もし本当にその程度で生き延びられるならお安い御用だ。こくこくと首を縦に振ると、彼は嬉しそうに笑った。
「じゃあよろしく、我が主よ。それから……」