第13章 全部
「やだぁ…いれてぇ」
「うん」
彼は身体を起こし、コンドームをつける。
私は彼の太ももを、手で少し触れて待つ。
「いれるね」
私の身体を軽く抱きしめ、優しく彼が言う。
「はぁはぁ…うん…」
待ち遠しい…もう身体の奥から高まってる…。
彼のものが、ぎゅうっ…と入ってくる。わたしの中に。
「あっ…あっ…気持ちいっ…気持ちいい…」
たまらなくて、私は声をあげる。
「はぁはぁ…まだいれただけだよ…」
「だって…あっ…すごく…すごく気持ちいいぃ…」
もう…身体中じんじんして…気が遠くなりそう…。
「僕は…僕はずっと好きだった。みなみのこと。高校に入学したときからずっと」
「あ…はぁはぁ…真司」
「みなみが実行委員に立候補したから…僕も立候補したんだ。そんな柄じゃないのにね」
「真司…?」
私の呼びかけを無視して、真司は話し続ける。
「少しだけでもいいから君との思い出が欲しかった。そして僕はすべて欲しくなったんだ。みなみのこと…」
「……」
「みなみも感じることはあるだろう? 僕はまともじゃない。いつでも逃げ出していいんだよ」
彼は私の髪を優しく撫でる。
私は、はぁはぁ息を吐きながら彼の顔を眺める。
そして口を開く。
「そんなこと思ってもないくせに」
「……」
「本当に逃げ出していいと思ってるなら、こんなときに言わないよ。そうでしょ?」
私は彼の目をのぞく。
「そう…かな…」
少し目を伏せて、彼はつぶやく。
私は彼の頬に手を添え、顔を上げさせる。
「あげる。わたしは全部真司にあげる。
だから…ちょうだい。真司もわたしに全部…」
彼は私の目を見つめて頷いた。
私は彼の唇にキスした。深く…。