第4章 黄色い四男の場合「映画」
10分後、ポケットに手を突っ込んで
少し下を向きながら、
口元の緩む彼が小走りで戻ってきた。
突然助手席側の扉を開けると
「!」
と言って私に抱きつく。
「………、」
突然すぎる彼の行動に頭が真っ白になった。
体を話した彼が私の停止した表情を見て、
「大丈夫?」
と声をかける。
「…だ、大丈夫じゃないよ!」
状況の把握できない焦る私を
笑って車の外へ連れ出すその人。
外は沢山の通行人が行き交い
彼に気付いて立ち止まる人もいれば
横目で見る人も声を出す人も
皆、私と彼を見ている。
「か、カズ…まずいよ!」
怖くて涙が出そうになる私を見つめる彼が
すごく優しい顔で笑った。
「今までいっぱい無理させてごめん。
でも今日からは…こうやって、
私があなたの手を繋ぐから」
公衆の面前で私の右手をギュッと握り、
まるであの映画のワンシーンかの様に
ポケットから出した白い紙切れを見せて
「…婚姻届け、出しました
二宮になって下さい」
順序の違う言葉と行動に
もう訳がわからなくなって
溢れる涙と笑いが止まらない。
私の手をずっと握りしてめていた彼は
映画の中の女優さんには見せない、
私だけに向けた笑顔で笑ってくれた。
FIN.