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薄桜鬼 群青桜

第16章 来訪者


「風間という鬼をご存知ですね。」

早速、千姫から切り出された内容は今や私達ともそれなりの因縁をもつ風間の目的。

「ああ。奴は千月を執拗に狙ってるようだが、目的はなんだ。」

土方さんも話を促す。

「簡単です。鬼という種族を存続させるために彼女を迎え入れ、子を産ませる。それが風間の目的です。」

皆、思い思いに真剣な表情をしながらその風間の目的を初めて知った。

「女鬼は男鬼と比べて産まれる確率が低い。たとえ純血でなくとも、この世界の住民でなくとも、利用できるならば…という事か。」

私も補足説明をしながら肯定した。
しかしながら目的はわかったものの、腑に落ちない点が私にはあった。

「私は鬼として純血ではあるが、それは西洋鬼としての血を含めての事だ。千姫や雪村さんの方が狙われ易いのではないのか?」

あくまで私に流れる半分の血は変若水の原料となる西洋鬼の血。鬼としての誇りが強い風間にとって、羅刹という紛い物の存在を許すはずがない。

だったら私より2人を狙う方が賢明ではないのだろうか。

「その可能性は結構低いと思うぞ?」

そんな私の疑問を解いたのは颯太だった。

「風間さんはさ、お前の事、興味本位で狙ってるんだよ。女のお前が前線で刀を振るって、その実力は風間さんも一目置いている。なのにその力を人間に貸してさ、疑問でならないらしい。」

颯太は言った。たまに風間は「正しい鬼の道へ戻す為に」と口を零している、と。

「俺もさ、あんだけ酷い目に遭わされた人間になんで力を貸すのかわかんねえよ。お前本当はもう戦える状態じゃねえんだろ?」

颯太が今発した言葉。それは私の治癒能力の事に他ならない。

「最初の動機は単純なものだったけどな。今も後悔はしていない。」

土方さん達に話しそびれていたこともあり、私は、私がひたすら隠し続けてきた事をゆっくり話し出した。

「私は、他人の怪我をも治癒する事が可能です。」

私は話した。対象者の痛みを肩代わりする事も、治癒の力を使う度に喘息の発作が酷くなることも。

「この治癒能力は西洋鬼の持つ力。ですが所詮私はその血が半分しか流れていない。だからそれ相応の対価がいるのです。」

全てを話し終えた。私が「これが真実だ」と教えられたことを。
それが嘘であるとは一時も疑いはしなかった。

「違ぇだろ。千月。」

この時までは。
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